新築中のカフェのキッチン動線にお施主のHさんが頭を悩ませていました。
というのは、このカフェのロケーションが、淡墨桜という、岐阜ではかなりの名所の真向いにあり、4月桜満開のシーズンともなるとそこへ至るまでの道が延々と渋滞を起こすという超繁忙期があり、逆にその約2週間以外はポッカリと閑散であるという、実に良くも悪くも風光明媚な地域性なのである。
お施主様のHさんは学校の教師という職に就いていて、過去に全くサービス業、ましてや飲食店業の経験はない。
ただでさえカフェの運営について「どのようにやっていこうか?」と悩ましいことが満載であるのに、「超繁忙期にどのように対応するか?」という非常に大きな課題がある。
なるべく人の手を借りずにその時期を乗り切ろうとすれば、勢い、オートメーション対応可能なメニューやドリンクのセルフサービスなどが選択肢に入ってくる。
けれど、これらは2週間以外はむしろサービスとしてはちょっと寂しい。
そしてキッチンの様々な設備や動線、給排水の位置にも大きく影響する。
当初はそのような計画で進めてきた。
Hさんが素晴らしいのは、ここで改めて基本に立ち返ったことだ。
なんのためにカフェを始めるの❓
どうしたら私らしくカフェをやれるの❓
自分が理想とするカフェのあり方やビジョンはどのようなものなのか❓
これを突き詰めたことで、超繁忙期対策をしない、という選択に至ったのである。
これはとても勇気がいることだ。
超繁忙期に超繁忙期対応をしない、ということは見込める売上(収益)が下がることに等しいからだ。
もちろん良い点もある。超繁忙期向けの設備が全面的に不要になり、動線もスッキリする。
Hさんにとってのカフェで本当に大切なのは、そこでは無かったということ。
カフェのコンセプトであり、ブランディングの根底をなすもの。
それこそが、Hさんのカフェにかける志なのだ。
「最も大切なのは、志を明確にしてブレないこと」。と1857年に吉田松陰先生も言っている。